かわかみ たろう
川上 太朗 さん
卒業年:
1993年
現在の勤務先:
株式会社COWOX
仕事内容:
産業動物(牛)獣医師
酪農肥育コンサルタント業
牛を食べる
「僕にとっての理想は、雌しか生まれない牛の受精卵をつくること。」そんな、一見奇想天外とも言えるものに挑むのは産業動物獣医師の川上太朗さんだ。幼少期に出会った獣医の男性から影響をうけてこの業界に入り、狂牛病や口蹄疫の問
題に直面したことで牛専門の医師になる決意をした。当然犬や猫の場合と違い、一つの場所に腰を落ち着けて治療にあたることはない。牛は簡単に移動させられるものではないからだ。大きな労力を要するが、日本中色々な場所を旅するこ
とはとても楽しいという。
そんな川上さんが力をいれているのが、雌しか生まれない受精卵の開発だ。その鋭い目線の先にあるのは「日本の食糧自給率を上昇させる」という大きな目標である。「どの時期にどんな病気にかかりやすいのか」「どうすれば食肉として理想的な牛になるのか」細やかなデータを作って各農家に呼びかける。牛のエサのチェックやその開発まで行う。全ては美味しい肉をつくるため。そして、安心安全な食糧を安定的に供給する体制を日本国内で構築するため。
「僕が今こうして獣医師となり食糧自給率上昇のために働いているのは、ただの偶然が重なったからかもしれません。でも、偶然というのは全ての人にいつも起こっていることなんです。それをつかまえて自分のチャンスとして活かすことが
大切です。今の君たちは失敗しても許される。
色々なことにチャレンジしてください。」川上さんは私たちにこう呼びかけた。彼は今日も、自身のその言葉を信じ、大きな目標を持って遠い農地へ足を運ぶ。
1年7組 女子・女子
「偶然」の力
株式会社COWOXで代表取締役として働いている産業獣医師の川上太朗さんは1993年に大宮高校を卒業した。そんな彼の人生には「偶然」が大きく関わってきた。「たまたま」隣家のおじさんが獣医師だったから、獣医師になろうと決めた。「たまたま」大学時代に通っていた卓球場で牛を専門とする獣医師と知り合ったから、牛を専門にしようと考えた。「たまたま」口蹄疫や狂牛病が流行したから、牛専門の産業獣医師としての思いを強く持つようになった。
2011年に株式会社COWOXを設立した。COWOXは日本全土の牧場に赴き、牛の健康管理や出産の立ち会い、さらには経営面におけるアドバイスなど、牛農家を包括的に援助する会社である。現在は体外受精によって乳牛の雌だけが生まれるように卵の加工をする研究もしている。乳牛は当然、雌でないと経済的な旨みが無く、雄が生まれると不要な牛として扱われることになる。
この卵の加工研究によって経済的な効率が向上すると同時に、必要以上に牛の命を奪うことがなくなる。経済活動と生命倫理の両方に適っているのだ。さらにはTPPを見越してベトナムの会社と提携し、低コスト飼料の輸入ルートを確立しようとしている。日本の農業を守ることは、日本経済の利益にもつながっている。
「偶然」のつながりを大切にしていくことで多くの人とつながれた、と語る川上さん。偶然の出会いをチャンスに変えていくこと、それが彼を支える力なのだ。
3年6組 男子・女子