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梅澤 朝樹

うめざわ あさき

卒業年:​2000年
​現職:株式会社インダストリー・ワン

武蔵野美術大学でデザインを学び、株式会社リコー、ヤフー株式会社、日産自動車株式会社と数々の企業でデザイン実務を経験し、現在はコネクティッド時代の自動車業界におけるユーザー体験を提案するマネジメント業務に従事する。

デザイン思考:

大高での体験を良くするスマホアプリもしくはサービスを考えて作ってみよう

世の中にある新しい製品やスマホアプリはどのように作られていると思いますか?そこには必ず困り事を解決するアイデアが含まれています。その視点は私達の身近に潜んでいる場合が多いです。この課題では、日常の困り事を解決するアイデアの出し方を学び、最終的にはアイデアを工作してプレゼンテーションしてもらいます。みなさんが将来どの職業についても生かせる論理的かつクリエイティブな思考を楽しく学びましょう。

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オリエンテーション

〜デザイン思考とは?〜

What(何をやるか)

デザイン思考(英: Design Thinking)とは、デザインに必要な思考方法と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決するための考え方で、スタンフォード大学を発祥とし、東京大学、慶應義塾大学SFCなどで取り入れられている全てのビジネスに必要とされる方法論のことです。この授業ではその一連のプロセスを体験し、アウトプットを出します。

Why(なぜやるか)

現在ではスマートフォンを初めとする技術の進歩により、誰もがアイデアを世の中に発進することができる時代になりました。故に、消費者も必要な物と不要な物の分別がはっきりしており、必要とされない物は直ぐに使われなくなってしまいます。これから皆さんが大人になった時に必要なことは、どんな状況でも課題を発掘し、独自のアイデアを発想し、他人とコラボレーションしながら形にすることです。この授業ではその基礎を学びます。

How(どうやるのか)

デザイン思考のプロセスに則り、スピーディに進みます。あまり堅苦しく考えず、気楽に手を動かしながら進めましょう。最終的には自分が考えたアイデアを「工作」によりプレゼンしてもらいます。綺麗に作る必要はありません。考えを伝えることが大事ですので、失敗を恐れず、自信を持って楽しく手を動かしましょう。

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アイスブレイク

 

似顔絵を

描いてみよう

いきなり「手を動かして」と言われても難しいものです。この授業ではペアワークになるのですが、まずは隣の人とペアになり、似顔絵を描いてもらいました。似顔絵を描くということは、

・観察すること

・観察結果を表現すること

・表現を修正すること

・表現することを拒まないこと

・他人に見せること

・みんなで見て楽しいこと

という「デザイン」することにとって必要な要素が複数含まれており、緊張をほぐすアイスブレイクとしては適切な手法になります。

共感

テーマは​「学校での生活」

友達が普段の生活で

​困っていることを

インタビューしてみよう

「学校での生活」というテーマで、困りごとを解決するアプリやサービスを考えてみよう。アイデアの種はインターネットや本には載っていません。実はかなり身近にあるものです。友人が普段どのようなことで困っているか、インタビューしてみましょう。

​インタビューから潜在的なニーズを深堀りします。深堀るためには相手の言葉に興味を持ち、「なぜ」と質問する必要があります。自分が想定していた質問だけしていては、一般的な情報しか得ることができません。

困りごとの原因

一見なんて事のない困りごとで

深堀ればその人ならではの

​ストーリーが見えてくる

休みが少ない、テストが多い、眠たい、水筒が重たい、教室のエアコン調整が面倒くさい、、、一見なんて事のない困りごとでも、「なぜそれが起こるのか?」「それはどういう事なのか?」を質問すると意外な答えが返ってくる。

・眠いのは夜、弟とゲームをやってしまっている

・授業ごとに課題が出るので全部をメモするのが大変

・先生にエアコンの温度を変えるよう頼まなくてはならない

・飲み物を買いたいけどお小遣いが制限されているから水筒で我慢している

そんな事で困っていたんだ。。。​困りごとの本質が見えてくる。

問題定義

困りごとを解決するためのコンセプトを立てる。

この人はこういうことに困っていて、

きっと本当はこうしたいはず。

事実から仮説へジャンプが必要。

インタビューして本質が見えてきた後は、一人になってじっくり考えてみる。「こんなことに困っていたけど本当はこうしたいんじゃないか?」「こうすれば解決するんじゃないか?」その仮説こそがアイデアのコンセプトになる。

例1:授業中眠くなってしまう困りごと

○○さんは、深夜に弟とのゲームをしてしまうため授業中眠くなってしまい困っている。でも本当は弟とのゲームを我慢し、勉強に集中したいと思っている。

例2:宿題がたくさんあって把握しきれない困りごと

○○くんは、授業ごとに宿題が出たりプリントが配られたりして、それらをまとめて把握することができず困っている。本当は全てを一覧し、宿題の量を把握し、時間配分を計算し効率的に勉強と遊びを両立したいと思っている。

例3:水筒が重たいという困りごと

​○○さんは、毎日重たい水筒を持ってくるのに苦労している。でも本当は水筒を持って来ないで自動販売機で飲み物を買いたいと思っている。現状はお小遣いが足りず、自動販売機で飲み物を買えない。

アイデア

その人の困りごとを解決するアイデアを

描いてみて見せてみる

コンセプトが立てられたら、それを具現化するアイデアを描いてみる。モノで解決する?アプリで解決する?もしくはシステムやルールで解決する?解決する方法はいくらでもあります。ラフで良いのでできるだけたくさん描き、インタビューした相手に見せてみます。

​すると、思いもよらぬフィードバックや新たな発想が得られます。また、見せた瞬間に発見することがたくさんあります。アイデアは何度でも直せます。どんなアイデアがそのユーザーに響くか、ラフな段階で試すことが大切です。

例1:たくさんある宿題が把握できない困りごとを解決するアイデア

全ての教室にiPadが設置されており、先生は授業終わりに必ずそれに宿題を入力する。するとその日の全ての宿題がクラウドで管理され、全生徒が1日の全ての宿題を一覧できる。

 

例2:水筒が重たいことを解決するアイデア

定額制の自動販売機を学校に設置。スマホでQRコードで購入できる。定額制であるためリーズナブルで飲み物を購入でき、お小遣いに負担もかからない。

例3:ロッカーに入れるものが多くなってしまう困りごとを解決するアイデア

今日何を持ち帰れば良いか分かる提案型アプリ​。1週間の予定や授業をインプットしておけばAIが何を持ち帰るべきかどうか提案してくれる。どのくらいロッカーをすっきりさせたいかどうかの設定もできる。

ロジックとマジック

デザインは思いつきではない

ロジックとマジックを掛け合わせた

​真ん中にあるもの

ここまで学んだことは、デザインは単なる思いつきではないということ。観察やインタビューからユーザーのインサイトを発見し、それを深堀っていった。更にそこから仮説を立て、表現したい事の根幹を立案した。そこにも発想力が必要だった。「本当はこうしたいんじゃないの?」という発想のジャンプが必要だった。事実や分析の"ロジック"だけでは良い発想は生まれない。自分の中にある"発想"という"マジック"も必要だった。

 

そこから更にアイデアを"表現"する必要があった。立案したコンセプトを意識しつつ手を動かす。頭の中には"ロジック"を意識し、手からは"マジック"が放たれる。アイデアを描いてみると"ロジック"だけでは成り立たない何かを感じる。時には"ロジック"が壊れる瞬間も経験できた。

1日目の授業はここで終わり。ここから約1ヶ月、じっくりと自分でアイデアを寝かせて考えてみる。アイデアというのは点ではなく線である。お風呂に入っている時、食事をしている時、ふっとマジックが降りてくる時もある。そんな経験をさせてあげたい。

プロトタイプ

 

身の回りのモノで

アイデアを実際のカタチにしてみる

2日目はいよいよアイデアを実際に作ってみます。目の前に置かれたのは牛乳パックやトイレットペーパーの芯、お菓子の箱、段ボールなど、身の回りにあるものばかり。生徒はこれらの素材から自分のアイデアが表現できる物を探します。

世の中には便利な道具、ツール、アプリ、インターネット、AIなどで溢れています。しかし、それらを利用するのは人間です。人間側にアイデアがあるからこそ道具は生かされます。そんなことも、この授業で感じ取っていただけたらと思います。

体験を

デザインすること

 

 

生徒は自然に

ユーザーの気持ちになって

デザインしている

綺麗である必要はなく、考え方が伝われば良い。自分が考えたアイデアを他人に伝えることに注力します。実際に手を動かしてリアルに作ることで気づくことはたくさんあります。

・サイズはこれだと小さすぎるか

・ここにはこういった情報を追加した方が良いな

・色は緑より青の方が良いな

・ここは回すよりも引っ張る操作にした方が良いな

​これら全て"デザイン"です。生徒たちはいつの間にか普段デザイナーがやっていることを当たり前のようにできるようになっています。「ユーザーがどうしたら心地良く体験できるか」、生徒は自然と考え、手を動かせるようになっています。

プレゼン

テーション

 

 

モノを見れば

ユーザーは直ぐにそれが

良いか悪いか判断できる

全員の作品を渡り廊下に並べてみました。それぞれの作品に、「アイデア名」「困りごと」「解決した方法」を記載してもらいました。「プレゼンテーション」ということで、最後にペアの相手に自分の作品の説明をします。

説明を受けたペアは、自分がユーザーということで率直な意見を述べることができます。ユーザーは「体験」の良し悪しを判断するスペシャリストでもあります。その作品が自分の生活の中にあったらどう感じるか、とても便利なのか、かえって邪魔くさいのか、少し直したらとても良くなるのか、素晴らしい判断力でコメントすることができます。

投票

更に全校生徒から投票

してもらうことで

学校の生活にとって

本当に必要な

​デザインが見えてくる

その場で授業に参加して生徒同士で投票をしてもらいました。自分たちの学校に「これ欲しい」と思うアイデアにシールを貼ります。投票結果がその場で可視化されることでお互いのシェアにもなります。

更に2週間ほど展示をしておき、全校生徒からも投票をしてもらいます。それにより、学校全体として必要なアイデアが見えてきます。

​デザインは誰でも参加できる分野です。誰でもアイデアを考えることができ、誰でも意見を言うことが出来ます。また、一緒に実現に向かって作ることもできます。今回考えたアイデアのいくつかが本当に実現できたり、生徒自身で学校の生活を良くしていく経験ができたら、とても素晴らしいことだと思います。

作品一覧

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